間取りは「動く線」だけでなく、「立ち止まる場所」まで考える

水曜日は、「間取り・動線」をテーマに書かせていただいております。

家づくりの間取りを考えるとき、「家事動線」や「回遊動線」という言葉をよく耳にします。

キッチンから洗面へ行きやすいか。
玄関から収納へつながっているか。
洗濯して、干して、しまうまでが短いか。

もちろん、こうした「動くための線」を考えることは、とても大切です。

ただ、実際の暮らしを考えると、もう少し細かく見ておきたいところがあります。

それは、人が「立ち止まる場所」です。

シューズクロークの棚の配置

たとえば、玄関収納を使うとき。
靴を脱ぐ、傘をしまう、上着を掛ける、荷物を一度置く。
このとき、人は必ずその場に立ち止まります。

洗面台でも同じです。
顔を洗う、歯を磨く、引き出しを開ける、ドライヤーを使う。
ただ通り抜けるだけでなく、そこに立って作業をします。

通路上の洗面コーナー

キッチンでも、冷蔵庫を開ける人、調理をする人、配膳をする人、食器を片付ける人がいます。
図面上では通路が確保されていても、冷蔵庫の扉を開けた瞬間に通りにくくなったり、食洗機を開けると後ろを通れなくなったりすることもあります。

キッチン作業スペース

間取り図を見るとき、多くの方は部屋の広さや収納の量に目が行きます。
でも、実際の暮らしやすさは、「その場所で何をするのか」「そのとき人はどこに立つのか」というところで変わってきます。

収納も、ただ多ければ良いわけではありません。

収納の扉を開ける場所。
物を出し入れするための余白。
一時的に荷物を置ける場所。
家族が横を通るときに邪魔にならないか。

こうした細かな部分が、毎日の使いやすさにつながります。

動線というと、どうしても「短くすること」や「ぐるっと回れること」が良いように思われがちです。
でも、短い動線でも、途中で人が重なったり、扉の開きとぶつかったり、物を置く場所がなかったりすると、かえって使いにくく感じることがあります。

逆に、少し距離があっても、立ち止まる場所にゆとりがあり、作業しやすく、家族同士がぶつかりにくい間取りのほうが、暮らしやすい場合もあります。

家の中では、ただ歩いている時間よりも、実は「何かをしている時間」のほうが多いものです。

着替える。
片付ける。
手を洗う。
料理をする。
洗濯物をたたむ。
荷物を置く。
子供に声をかける。
一度立ち止まって、次の動作に移る。

そう考えると、間取りは「人がどう動くか」だけでなく、「どこで止まり、どの向きで、何をするのか」まで考える必要があります。

これは図面上では、なかなか伝わりにくい部分です。
でも、実際に暮らし始めると、とても大きな差になります。

当社で間取りを考えるときも、単に部屋を並べるのではなく、暮らしの場面を想像しながら検討します。

朝の忙しい時間に、洗面で家族が重ならないか。
玄関で子供が靴を履いている横を、大人が通れるか。
買い物袋を持って帰ったとき、どこに一度置けるか。
洗濯機の前に立ったとき、後ろの扉や収納と干渉しないか。
冷蔵庫を開けたとき、キッチンに立つ人の邪魔にならないか。

こうした小さな確認の積み重ねが、住んでからのストレスを減らしてくれます。

間取りの良し悪しは、見た目の広さや流行の動線だけでは決まりません。
家族が毎日そこでどう動き、どこで立ち止まり、どんな動作をするのか。

そこまで考えていくことで、本当に暮らしやすい間取りに近づいていくのだと思います。

「動きやすい家」だけでなく、「立ち止まっても使いやすい家」。

そんな視点も、間取りを考えるうえで大切にしていきたいところです。

子供が10代になったころに、暮らしはもう一度変わる

今日は、子育て世代の家づくりについて、少し先の暮らしを考えてみたいと思います。

家づくりを考える時、多くの方がまず想像されるのは、子供が小さい時期の暮らしではないでしょうか。

玄関から帰ってきて、手洗いをして、ランドリールームがあって、ファミリークローゼットがあって、家族みんなの動きがスムーズにつながる。

もちろん、こうした間取りはとても大切ですし、子育て中のご家族にとっては大きな助けになります。

ただ、家族の暮らしはずっと同じではありません。

子供が小学生から中学生、高校生へと成長していくと、家の中での過ごし方も少しずつ変わっていきます。

塾や部活で帰宅が遅くなったり、夜遅くまで勉強したり、親とは違う時間帯で生活することも増えてきます。

小さい頃は、リビングに集まって過ごすことが自然だったとしても、10代になると自分の部屋で過ごす時間も長くなります。

そうなると、家の中で少し困ることが出てきます。

たとえば、夜遅くに子供が飲み物を取りに1階のキッチンまで降りてくる。

ちょっとした夜食を食べるために、リビングやキッチンを使う。

その物音や照明の明かりで、先に休んでいた親が目を覚ましてしまう。

逆に、朝早く起きる親の生活音が、夜遅くまで起きていた子供に響いてしまう。

こうしたことは、間取りが悪いというよりも、家族の生活リズムが変わってきた証拠なのだと思います。

そこで、ひとつ簡単にできる対策として考えられるのが、2階に小さな生活拠点をつくることです。

大がかりなリフォームではなく、2階のホールや廊下の一角に、小さな冷蔵庫を置いておく。ファミリークローゼットの中でもいいかと思います。

飲み物やゼリー、ちょっとした軽食などを置いておけば、子供が夜にわざわざ1階まで降りてくる回数を減らすことができます。

あわせて、ゴミ箱も近くに置いておくと、ペットボトルやお菓子の袋が子供部屋にたまることも防ぎやすくなります。

2階廊下の片隅

このお宅だと、2階廊下の片隅が使えそうです。

 

ただし、注意点もあります。

ミニ冷蔵庫を置くにはコンセントが必要ですし、電気ケトルなど消費電力の大きなものを使う場合は、タコ足配線にならないように気を付けなければいけません。

また、冷蔵庫を床に直接置くと、重みで床がへこんだり、結露や水滴でフローリングにシミができたりすることもあります。

下にマットを敷くなど、ちょっとした配慮も大切です。

家は、建てた時が完成ではありません。

子供が小さい時期に合っていた暮らし方も、10年経てば少し合わなくなることがあります。

でも、それは失敗ではなく、家族が成長しているということだと思います。

リビング階段や吹き抜けのように、家族の気配を感じられる間取りも、とても良い設計です。

ただ、子供が10代になるころからの約10年間だけは、親と子供の生活時間が少しズレる時期でもあります。

その時に、間取りを大きく変えるのではなく、家具や家電、コンセントの増設などで、今の暮らしに合わせて少しずつチューニングしていく。

そんな考え方も、長く快適に住むためには大切ではないかと思います。

昔建てていただいたお客様でも、「最近、子供の帰宅時間が遅くなってきた」「2階で過ごす時間が増えてきた」「夜の生活音が少し気になる」ということがありましたら、こうした小さな工夫から考えてみるのも良いかもしれません。

家族の成長に合わせて、住まいも少しずつ育てていく。

そんな視点で、これからの家づくりや暮らしの見直しを考えていただけたらと思います。

子供の成長を考えた間取りは、「子供部屋」より「毎日の通り道」が大切

水曜日は「間取り・動線」をテーマに書かせていただきます。

子育て世代の家づくりで、よく話題になるのが「子供部屋をどうするか」ということです。

何帖にするか。
最初から個室にするか。
将来、間仕切りできるようにするか。

もちろん、これらも大切な検討項目です。

ただ、実際に暮らし始めてから差が出るのは、子供部屋そのものよりも、子供が毎日通る動線のほうではないかと思います。

玄関横にクローク

子供は、家に帰ってきたら、まず玄関に入ります。

そこから、靴を脱ぎ、上着を脱ぎ、ランドセルやカバンを置き、手を洗い、リビングへ行く。
あるいは、習い事や部活の道具を片付ける。
雨の日であれば、濡れたものをどこに置くかも考えなければいけません。

この流れがきちんと考えられていないと、どうなるか。

玄関に靴が並ぶ。
リビングにランドセルが置かれる。
ダイニングテーブルの上に教科書やプリントが広がる。
上着が椅子に掛けっぱなしになる。

これは、子供が片付けないからというより、片付ける場所が動線上に用意されていないことが原因の場合も多いと思います。

家づくりで大切なのは、子供に「片付けなさい」と言う前に、片付けやすい場所をつくっておくことです。

玄関横のクローク

たとえば、玄関からリビングに入るまでの途中に、ランドセルや通学カバンを置ける収納がある。
上着を掛けられる場所がある。
習い事の道具や部活の用品を一時的に置ける場所がある。
そして、その近くに手洗いの動線がある。

玄関からの流れで手洗い

こうしておくと、帰宅後の行動が自然な流れになります。

「ただいま」
「靴を脱ぐ」
「カバンを置く」
「上着を掛ける」
「手を洗う」
「リビングに入る」

この一連の動きが、無理なくつながっていることが大切です。

 

反対に、収納が2階の子供部屋にしかない場合、小さいうちはなかなかそこまで持って行きません。

親としては「自分の部屋に持って行きなさい」と言いたくなりますが、毎日のことになると、結局リビングやダイニングに物が集まってしまいます。

子供が小さいうちは、子供部屋よりもリビングまわりで過ごす時間のほうが長いものです。

キッチン前の学習スペース

だからこそ、小学生くらいまでの子供の持ち物は、1階の生活動線の中に置き場所を考えておくと、暮らしがずいぶん楽になります。

もうひとつ大切なのは、成長に合わせて、その収納の役割が変わっていくことです。

小さい頃は、ランドセルやおもちゃ、絵本の置き場。
小学生になると、教科書や習い事の道具。
中学生、高校生になると、部活用品や制服、カバン類。
子供が独立した後は、夫婦の外出用品や日用品の収納。

このように、子供のためにつくった収納や動線も、将来的には家族全体の収納として使うことができます。

つまり、子供の成長を考えた間取りというのは、子供専用の空間をたくさんつくることではありません。

むしろ、家族が毎日使う動線の中に、成長に合わせて使い方を変えられる余白をつくっておくことだと思います。

子供部屋は、いずれ必要になります。
しかし、子供が本当に毎日使うのは、玄関からリビングまでの通り道であり、洗面や収納への動線です。

ここを丁寧に考えておくと、家は散らかりにくくなります。
親も小言を言う回数が減ります。
子供も自然に片付ける習慣が身につきやすくなります。

間取りを考える時には、部屋の広さや数だけでなく、子供が帰ってきてからの動きを一度なぞってみることが大切です。

玄関に入って、どこで靴を脱ぐのか。
カバンはどこに置くのか。
上着はどこに掛けるのか。
手はどこで洗うのか。
宿題はどこでするのか。
次の日の準備はどこでするのか。

この流れが見えてくると、必要な収納の場所も、洗面の位置も、リビングとのつながり方も自然に決まってきます。

子供の成長を考えた間取りで大切なのは、特別な子供部屋をつくることではなく、毎日の行動が自然に整う動線をつくること。

そこまで考えておくことが、暮らし始めてから本当に使いやすい家につながるのではないかと思います。

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