浸水被害から考える、基礎断熱を採用しない理由
今日は、当社が原則として基礎断熱を採用していない理由について書いてみたいと思います。
「基礎断熱をしない」といっても、玄関や浴室など、納まり上どうしても基礎断熱にしなければならない部分はあります。
ただ私自身は、できることなら、その範囲もなるべく少なくしたいと考えています。
その大きな理由のひとつが、豪雨による浸水被害への備えです。
2004年7月に起きた福井豪雨の際のことです。私は以前勤めていた会社で、その当時から建てていたのは「FPの家」でした。
そのときのお客様のお宅でも、床下浸水が3件、床上浸水が1件あり、社員が手分けをして復旧作業にあたりました。
私も床下点検口から床下に入り、当時あった床下換気口を外して、外からホースで水を流しながら泥を洗い、水を吸える掃除機で吸い取る作業をしました。
かなり大変な作業だったことを今でも覚えています。
それでも、床下浸水のお宅では、FPの家が床部分で断熱・気密を取る床断熱の構造だったため、床下の復旧作業をしている間も、お客様には基本的に普段どおり生活していただくことができました。
床上まで浸水したお宅については、床材や石膏ボードの張り替えが必要になりましたが、FPの硬質ウレタン断熱パネルはそのまま使用することができました。
一方で、周囲のお宅を見ると、外壁まで剥がして、濡れたグラスウール断熱材を撤去しているところもあり、その後始末はさらに大変そうでした。
この経験から、FPのウレタンパネルが水の影響を受けにくいこと、そして床下と室内を断熱・気密ラインで分けていることのメリットを、改めて実感したものです。
ただ、その床下の掃除をしながら、もうひとつ感じたことがありました。
当時の床下点検口は室内の床から入るものだったため、泥だらけになった状態で出入りするには、室内を汚さないように養生をしたり、かなり気を使わなければなりませんでした。
そこで独立してから、当社の家づくりに取り入れたのが、写真のような外部から床下へ直接入ることのできる基礎点検口です。
万が一、床下に水や泥が入った場合にも、外部から直接作業ができます。
もちろん災害時だけではありません。
床下の給排水管などを点検したり、将来配管を交換したりするときにも、室内から出入りする必要がありませんし、ある程度長い配管材でも、そのまま床下へ持ち込むことができます。
住宅は建てたときだけでなく、何十年先までメンテナンスしやすいことが大切だと考えているからです。
最近では、基礎断熱を採用する住宅も多くなりました。
基礎の中に換気設備を設置したり、多くの配管を通したり、さらには床下エアコンによって床下空間そのものを空調に利用する方法もあります。
もちろん、それぞれにメリットがあって採用されている工法だと思います。
ただ私は、万が一床下まで浸水した場合のことも考えてしまいます。
床下に設置された機械設備は水に浸かれば故障する可能性がありますし、泥水が入れば、その後の清掃や臭いへの対応も必要になります。
床下を室内環境の一部として利用しているほど、その影響は室内側にも及びやすくなります。
家は、一度建てたら終わりではありません。
大雨や浸水といった予期せぬことが起きたときにどう復旧できるか。
設備が古くなったときにどう交換できるか。
そして、何十年先まで無理なくメンテナンスしながら住み続けられるか。
過去の災害復旧を実際に経験したからこそ、私はそうしたところまで考えて家をつくりたいと思っています。
新しい工法や設備を取り入れることだけでなく、「もしものときに直せる家であること」も、長く安心して暮らせる住まいの大切な性能のひとつだと考えています。



