照明の話⑫ 夜の家には、暗さがあってもいい
これまで照明について、どこを照らすか、どんな器具を使うかといったお話をしてきました。今回は少し視点を変えて、「暗さ」について考えてみたいと思います。夜の家は、昼間のように隅々まで明るくしなくてもよい。むしろ暗いところがあるからこそ、光がきれいに見えることがあります。
暗いところがあるから、光がきれいに見える
住宅の照明を考えるとき、どうしても「暗くならないように」と考えがちです。
もちろん、階段や廊下など、安全に歩くために必要な明るさは確保しなければいけません。
ただ、リビングでくつろぐ時間まで、部屋の隅々を同じ明るさにする必要はないと思っています。
壁を照らす光、テーブルを照らす光、棚の下からこぼれる光。そのまわりに少し暗い場所が残ることで、光のある場所がより印象的に見えてきます。
明るさと暗さの差、つまり陰影があることで、夜の室内にも奥行きや落ち着きが生まれるように思います。
夜は、低い位置の光も心地よい
昼間は上から太陽の光が入ってきますが、夜まで天井から強い光だけで過ごす必要はありません。
例えば、リビングではスタンド照明や家具の下の間接照明だけを点けて過ごすこともできます。
寝室でも、寝る前は天井の照明を消して、ベッドまわりの低い位置の光だけにすると、自然と気持ちも落ち着いてきます。
照明を「足す」ことだけではなく、必要のない照明を「消して過ごす」ことまで考えておく。
それも、住宅の照明計画のひとつだと思っています。
『陰翳礼讃』にも通じる光の考え方
谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』という随筆があります。
そこでは、日本の建築や暮らしの中にある、明るさだけではない「陰影の美しさ」が語られています。
もちろん、昔の暮らしをそのまま今の住宅に取り入れるということではありません。
ただ、すべてを明るく照らすことだけが美しさではない、という考え方には、今の住宅照明にも通じるところがあるように思います。
光があるところと、影になるところ。その両方があってこそ、素材の表情や空間の奥行きも感じられる。
夜の家だからこそ楽しめる、そんな照明があってもよいと思っています。
■まとめ
照明について、ここまでいろいろな角度から書いてきましたが、まだまだお伝えしたいことがあります。明るくするだけではなく、暗さや陰影まで含めて空間を考えるのも照明の面白さです。また良い実例やお話ししたいテーマが出てきましたら、引き続きご紹介していきたいと思います。
モデルルームでは、昼間とはまた違う、夜の照明や陰影のある空間もご覧いただけます。見学のご予約は、公式LINEからお気軽にお問い合わせください。
20坪弱の平屋に、吹抜けと6帖ロフトを|施工事例「with」
本日の土曜日は、施工事例をご紹介します。
今回ご紹介するのは、
**平屋約20坪+6帖のロフトを設けた「with(ウィズ)」**です。
限られた床面積の中でも、できるだけ窮屈さを感じず、明るく開放的に暮らせるように計画しました。
LDKには屋根勾配を活かした大きな吹抜けを設けています。
狭小地では、周囲の建物との関係から、1階の窓だけで十分な光を取り込むことが難しい場合もあります。
そこでこの家では、吹抜け上部にハイサイドライトを設け、上から光を取り込む計画としました。
高い位置から入った光が室内の奥まで届き、20坪弱という建物の大きさ以上に、伸びやかな空間に感じられます。
吹抜けに沿って設けた木の階段を上がると、6帖のロフトへ。
個室として完全に閉じるのではなく、LDKとのつながりを残したことで、上下階がひとつの大きな空間として感じられるのも、この家の特徴です。
一方、LDKの奥にはタタミの間を設けました。
玄関土間から格子戸を通って直接入れるつくりとしており、普段の居場所としてはもちろん、来客時にも使いやすい空間です。
木の格子戸や無垢材の床、階段など、自然素材のやわらかな雰囲気をベースにしながら、キッチンまわりにはグレーを取り入れ、少しモダンな印象も加えています。
洗面・脱衣室などの水まわりも、限られた面積の中で収納や物干しまで考えながら、日々の使いやすさを大切に計画しました。
大きな家をつくらなくても、
吹抜け・高さ・光・視線の抜けを上手に組み合わせることで、豊かな空間はつくれる。
そんなことを感じていただける「with」です。
家の大きさだけではなく、そこでどんな暮らしをしたいのか。
一棟一棟、そのご家族に合った住まいを考えていきたいと思います。
照明の話⑪ 吹抜けは壁を照らして魅せる
吹抜けは、昼間は高い窓から入る光や開放感が魅力ですが、夜になると照明の計画によって、また違った表情を見せてくれます。今回は、吹抜け全体をただ明るくするのではなく、壁や天井に光を当てながら、高さのある空間を活かす照明についてお話しします。
吹抜け全部を明るくする必要はない
吹抜けというと、天井が高い分、たくさん照明を付けないと暗いのではと思われるかもしれません。
でも、住宅の照明は空間全体を均一に明るくする必要はないと考えています。
例えば、吹抜けの壁に近い位置へダウンライトを配置して、壁面を明るく照らす。
目に入る大きな壁が明るくなることで、吹抜け全体としても明るさを感じやすくなります。
高い空間だからこそ、天井ではなく「大きな壁面をどう見せるか」が大切になります。
高さがあるからこそ、光の見せ方も広がる
吹抜けでは、壁際のダウンライトだけでなく、ブラケット照明やスポットライト、間接照明なども使うことがあります。
上方向に光を広げたり、逆に高い位置から下へ光を落としたり。
壁や梁、天井面に光が当たることで、昼間にはあまり意識しなかった高さや形が、夜になると浮かび上がってきます。
昼間の吹抜けが「自然光を楽しむ空間」だとすれば、夜は「光と陰影を楽しむ空間」に変わるように思います。
吹抜けの照明は、空間をどう見せたいかから
吹抜けの照明計画は、単純に「何灯あれば明るいか」だけでは決めにくいものです。
リビングからどの壁が目に入るのか。2階から見下ろしたときにどう見えるのか。梁や勾配天井を見せたいのか。
そうした視線を考えながら、光を置く場所を決めていきます。
吹抜けは高さがある分、照明計画も少し難しくなりますが、その分、夜にしか見られない表情をつくることができます。
設計する側としても、とてもやりがいを感じるところです。
■まとめ
吹抜けは、昼間の開放感だけでなく、夜の照明まで考えることで魅力が広がります。すべてを明るくするのではなく、壁や天井など見せたい場所に光を届ける。そんな照明計画で、夜ならではの吹抜けを楽しんでいただけたらと思います。
モデルルームでは、昼と夜で変わる空間の見え方も実際にご覧いただけます。照明計画を含めた家づくりのご相談は、公式LINEからお気軽にどうぞ。















